東京地方裁判所 昭和45年(ワ)3228号 判決
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〔判決理由〕(一) (事故と傷害の関係)
原告らが本件事故により、いかなる傷害を受け、その回復のため、いかなる治療を必要とする事態となつたかにつき検討する。
原告らが本件事故のため、原告主張請求の原因第一項(六)記載どおりの傷害を受けたことは当事者間に争いなく、<証拠>および弁論の全趣旨をあわせると次のような事実が認められる。
原告は、大正五年一月五日生の男性で、本件事故時、青果物販売業を営んでいる(右職業については当事者間に争いない)者であるが、本件事故前の昭和四一年一一月三〇日にも、追突事故に遭遇し、やはり頸部に外傷を受け、昭和四二年七月七日迄これに対する治療を受けたが、前同日頸椎に障害があり、頸部の前後屈運動に制限を受ける症状を示すところの脊柱に運動障害を残す状況で、外科的療法による顕著な症状はもはや望めず、爾後の改善は本人の回復への意欲と社会生活での馴化とに大きく負ういわゆる症状固定状態となり、通常人に比し、強度のあるいは長時間の労働は望めないが、就労が通常人の半分をこえる五五%程度は可能となつて、昭和四二年八月に入つてよりは現に就労稼働していたところ、本件事故のため、今回も頸部外傷を受けたのであるが、今度は前回に比し、握力の低下が新らしい症状としてあらわれ、事故直後の八日間の入院生活のほか、なお、事故後一年目よりは症状に若干の改善をみ、平均すると二〇%の就労は可能な状態となりつつ昭和四四年九月二二日迄治療につとめたものの、結局握力の低下は、外科的療法によつては、右同日、なおかなり顕著に残存し、そのため、右時点でもなお残る前回事故の後遺症状と合すると、原告は、その就労しうる労務は軽労働に限られ、数量的に示すと、前回の五五%よりさらに一〇%は通常人に比すると労働能力を低下させる状況となつていわゆる症状固定期に入つているのである。
以上のような事実が認められ、<証拠判断略>。
右認定事実によると、原告の本件事故により受けた傷害は、昭和四四年九月二二日をもつてその外科的療法を終りその後は心理的療法と、そしてなによりも原告本人の社会復帰への意欲、社会生活への馴化により、その労働能力回復が期待できる段階に至つていることが認められ、かつ、右認定の傷害部位、現存症状そして原告の社会的地位、年令、そして、前回の事故による後遺症状が脊柱に運動障害をもたらし、本件事故のほぼ二カ月前症状固定に至つていること、右後遺症状内容、それにより導出される労働能力低下の割合などにより、その後遺症状の継続期間はその症状固定時より六年間と判定できることなど、をもあわせ考慮すると、本件事故によつて、原告が喪失低下した労働能力割合は、事故後一年間は五五%、さらにその後昭和四四年九月二二日迄は三五%、そして症状固定後三年間は一〇%となるものとみるべきであり、その余の能力低下は本件事故の有無にかゝわらず、生じたもので、本件事故と相当因果関係を有しないと判断すべきものである。
(二) (治療関係費)
(1) <略>
(2) <証拠>および弁論の全趣旨によると、原告は昭和四四年四月一五日より同年九月三〇日迄の間四八回に亘り、マッサージを受け、そのため施術料として金二万四、〇〇〇円の出費をしたことは認められるが、前同証拠によると、右マッサージは頸部の運動障害を中心とし、全身の知覚不全に対処するものとしてなされており、前記(一)認定の握力低下が中心として現出した今回の事故による症状に対するものとして有効適切と考えられず、そのほか、本件全証拠によるも、これが本件事故による症状回復に必要であつたことを認めるに足りないので、右金員出費は本件事故と相当因果関係をもたない。
(3)(4) <中略>
(三) (逸失利益)
<証拠>および弁論の全趣旨によると、原告が青果物販売業を営んで健康時取得していた収益は、これよりその義務を尽くし本来手中にしえない公租等を控除しても、一カ月当り金五万円を下ることはないことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。
そうすると、原告が本件事故のため逸失した労働によりうべかりしはずであつた利益は、前記(一)認定の喪失割合により算出すると、事故後一年間は金三三万円、その後昭和四四年九月二二日迄一年と一〇日分は金二二万六、四三八円、症状固定後の三年間逸失利益の固定時価額はライプニッツ複式月別法によると金一六万七、一〇二円となる。この合計金七二万三、五四〇円が、本件事故と相当因果関係をもつ逸失利益である。
(谷川克)